・自殺対策活動@神奈川県大和市
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初期研修医を対象としたうつ病診療・自殺念慮対応研修




自殺対策活動@神奈川県大和市



新潟や北東北など、自殺が多い地域では、いくつかの農村地域を対象を絞って地域活動を積極的に行い、自殺を減らしたところがいくつかあります。しかし、都市部や首都圏の自殺対策は著しく遅れていて、「こうして自殺を減らした」という活動報告はこれまでにありません。そうはいっても、いくつかの都市でようやく取り組みが始まっていて、これに従事している人たちの声が聞こえてくるようになりました。

 神奈川県大和市では、2007年から、自殺対策が実施されています。これは、神奈川県下ではじめての自殺対策のモデル地区事業でした。どうしてここがはじめてだったのかというと、それは、当時、大和市が県下で自殺率が比較的高かったのが理由です。まず、神奈川県精神保健福祉センターが横浜市大の活動チームと話し合いながら対策モデルを作りました。そして、これを大和市長が引き受けました。厚生労働省からも、3年間の期限ではありましたが補助金がおりました。そして事業が開始されました。

 大和市の自殺対策は、いわゆるポピュレーション・アプローチで、「住民参加」、「庁内全部署参加」、「地域保健・福祉のボトム・アップ」をキーワードにしています。はじめは、神奈川県精神保健福祉センターの主導のもと、今現在は、大和市、大和保健所、横浜市立大学の活動チームが実質的な事業の管理を行い、対策活動の企画、推進、そして細部の調整を行っています。

 ここで行われている事業内容を表1にまとめました。



この中にある、「わたしのこころサポート講座」というのは、「ストレス」について学び、自分のこころの健康を護るための学習をする講座のことで、リラグゼーション法の実習も行われます。そして、「こころサポーター養成研修」というのは、こころの健康の重要性を知り、こころの不調を抱えている人に気付き、対応してあげられる人を養成する講座のことで、すでに大和市では300人以上のこころサポーターが誕生しています。

 大和市は、全課長職への自殺対策研修、相談窓口の充実化、特別チームの設置による相談電話・訪問活動なども実施してきました。また、自殺対策フォーラム実行委員会を立ち上げ、住民や活動家を委員として招集し、市民公開のイベントを実施しています。自死遺族支援は、大和生と死を考える会のサポートによる行われています。

 他に、特筆すべきものとして、大和市とその周辺医療圏の医療施設や保健・福祉施設に勤務するソーシャルワーカーや看護師を中心に、「大和・藤沢自殺予防ネットワーク」という任意団体が有志により発足し、自殺対策に関わる従事者や、医療・保健従事者が定期的に集まり、事例の検討を行ったり、学習をしています。






初期研修医を対象とした
 うつ病診療・自殺念慮対応研修



■研修概要

 自殺をした方のほとんどが、精神疾患に罹患した状態で自殺を遂げていたことが、自殺者および重症自殺未遂者に関する調査から知られており、その中でも、うつ病が最も頻度の高い疾患であることが知られています。こうしたことから、うつ病対策は自殺対策のかなめとされています。しかし、実際には、うつ病に罹患した方の多くは、頭痛や肩こり、全身のだるさ、食欲低下などの身体の不調が続くことに注意が向くあまり、なかなかそれがうつ病の症状とは気づくことができずに、内科や婦人科といった精神科以外の診療科を受診しています。そのため、本人も周囲も、そして精神科医以外の医師でさえも、うつ病や精神疾患についての適切な知識がなければ、見過ごしてしまうことがあるのです。したがって、自殺を予防するためには、精神科に限らず、地域で診療を行う医師が、うつ病を早期に気づき、適切に対応することが求められています。

そこで、横浜市こころの健康相談センターと横浜市立大学精神医学教室は共同し、平成21年からの2年間、「うつ病患者に対する診断・対応技術向上のための研修プログラム」を実施しました。

 

■研修期間と参加者について

研修期間:平成21年から平成22年度の2年間
参加者 :初期研修医制度の地域研修プログラムに参加した初期研修医71名
男性47名・女性22名・不明2名、平均年齢27.2歳。 



■研修ではどんなことをするの?

研修は、@講義とA実際の診察場面を演じあうロール・プレイイングを実施しました。

@ 講義

・うつ病の基礎知識、診断と対応について
・死にたい気持ちへの対応について
・横浜市で実施されている自殺対策および精神保健福祉施策について

A ロール・プレイング

実践的なスキル・トレーニングを目的とし、医者役・患者役・患者の妻役・記録係を決め、実際の診察場面を想定したシナリオに沿って模擬演技を行いました。シナリオは、大手自動車部品会社に務める45歳男性がうつ病の症状を訴えて来院したという内容です。うつ病の診察場面だけでなく、患者さんのうつ症状が悪化して死にたい気持ちが強まり、お酒と一緒に市販睡眠剤を過量に服薬したことで、急遽受診した場合の対応についても模擬演技を実施しました。

       

      写真1:講義の様子      写真2:ロール・プレイングの様子



■研修を終えて

今回の研修を通し、研修医の方々は正しい知識を身に着けただけでなく、「死にたいという気持ちがある患者さんに、なんて声をかければいいのだろう?」といったことを考えながら、これからの臨床に持ち帰れる知識やスキル、さらにはそれぞれの課題を見つけたようです。ロールプレイでは、うつ病診断や自殺念慮の危険度評価を実際に行う上での知識が不足していたこと、さらには、診断結果および今後の治療について患者さんやその家族に分かりやすい言葉で説明することを苦手としていたことなどが課題として挙がっていました。それぞれのロールプレイ実施後は、こうした課題点に加えて、良かった点についてフィードバックを行ったほか、精神科医師によるまとめの講義も行われました。

研修の終了時に行ったアンケートでは、自殺予防に関する意識は、研修前に比べてより望ましいものになったという結果が得られていました。本研修は、終了してしまいましたが、今後は、医学部生への教育の一環として実施し、地域の自殺予防対策を進めて行く予定です。





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