2012/08/31 寿町での実習見学より
 2012/05/23 内閣府による自殺総合対策大綱に関するヒアリング
 2012/12/18 栄区メンタルヘルス支援ネットワークに参加して 


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栄区メンタルヘルス支援ネットワークに参加して

この度、横浜市栄区で行われているメンタルヘルス支援ネットワークの第2回定例会に参加してきました。栄区メンタルヘルス支援ネットワーク定例会は、栄区とその近隣で保健・福祉に関っている専門職や従事者が集まり、スキル・アップと顔の見えるネットワークの構築を目的として行われているもので、今回は、栄区役所会議室で、メンタルヘルス不調事例を元に、グループごとのワークショップとアドバイザーの精神科医師によるレクチャが行われました。参加者は、30名以上の方が集まりました。

さて、会の様子ですが、まずネットワークの事務局の方から挨拶があり、会のアドバイザーで、栄区のセーフコミュニティ活動の座長の一人でもある精神科医師の方からネットワークの成り立ちと、その効用について説明があり、すぐに事例検討に移りました。

検討事例は、とあるリハビリ施設の利用者さんについて、個人情報に配慮した形で行われました。気分障害の問題と、生活上のさまざまな出来事を経て不明死をされたかたで、自殺も疑われたかたでした。参加者は5グループに分かれて、死に至った問題点の振り返りと、もしも同じような事例に出会ったとしたらどのような介入が可能なのかを考えました。そして、最後に各グループでまとめた意見を発表し合いました。

事例検討のあとはレクチャでしたが、事例と関連した医学的な問題や心理的な問題に関する振り返りと、実施可能な支援について、「こういう考え方もあります」、「こんな支援方法もあります」などとさまざまなオプションが提示され、多面的に事例を振り返ることができました。たとえば自殺の危険性などを踏まえて、困窮した方に介入する際の各職種間の連携の具体例とその大切さも学ぶことができました。レクチャでは、“薬を飲んでいる人に飲酒は厳禁”という、当然だけど意外と知られていないことも多い重要事項についての確認もありました。

感想ですが、参加者は、区役所の一般職員の方から福祉職の方、また地域の福祉施設で働く社会福祉士・精神保健福祉士や、相談員、栄区独自の“ハートフル・サポーター”の方など様々で、近隣病院からもソーシャルワーカーや看護師の方が参加されていました。いずれの方もそれぞれの部署や施設で実務を担っている方々なので、事例検討の際には様々な意見を聞くことができました。様々な知識を得られることは、保健・福祉的支援のさらなる向上のためにも大切だし、他職種が集まる会合ならではだと思いました。

医学部の講義室だけでは、生活支援センターをはじめ、様々な福祉施設で実際に行われている支援の様子はおろか、どんな方々が働いているのかということすら知り得ません。何の専門性も持たない自分がこのような会に参加して大丈夫なのか最初は不安でしたが、とてもよい勉強になりました。



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寿町での実習見学より


「寿町」、横浜に住んでいる人ならば、その名を知らない人は少ないでしょう。東京の山谷・大阪の釜ヶ崎と並んで日本の三大寄場のひとつに数えられ、町には簡易宿泊所が立ち並びます。これらの簡易宿泊所は、「ドヤ」と呼ばれますが、宿にも及ばないからそう呼ばれているそうです。

こんな寿町に対して、どちらかといえば負のイメージを、私は持っていました。「寿町に一度はちゃんと行ってみたい、でも一人で行くのはなんとなく恐い」、そんな風に思っていた私に、この夏、寿町を訪れる機会がやってきました。医療系部活の仲間と、寿町の中にある診療所「ことぶき共同診療所」を見学する会が企てられたのです。

日時は8月31日、残暑も厳しくまだまだ真夏の日差しが肌に焼付きます。そんな日差しの中、朝9時前に石川町駅を降りて歩くこと数分、突然炎天下の下、行列を見つけました。そうです、こここそがことぶき共同診療所で、この診療所は寿町の一角に位置しているのです。さあ、ここから今日一日の寿町見学が始まります。

<9:00>
まず、ことぶき共同診療所内に入らせていただきました。内側に入ると、先ほど並んでいる人々に、看護師さんが薬を渡しています。これは「DOTS」と言われる、医療者の目の前で薬を飲む方式で、もともとは結核の患者さんが確実に薬を飲むようにとられた治療法だとのことです。寿町では、高齢化が進んでおり、65歳以上の人が50%を超えています。加えて単身で暮らす方が多く、認知症の患者さんに対しても、薬の管理をしてくれる家族がいません。そのため、寿町ではこのDOTSの患者さんが多いとのことです。さっき行列を作っていた人たちはこのために並んでいたのです。

ことぶき共同診療所では、朝会の見学もしました。15人弱のスタッフたちが円になって、患者さんの情報を交換し合います。患者さんの家に見守りに行ったスタッフが報告もします。かたや受付の方では患者さんに薬を飲ませる看護師さんたち・・・。たくさんの人がこの診療所で活躍している様子が垣間見られました。

<9:40>
診療所の朝会が終わったら、今度は寿町の町案内をしていただきました。案内人のKさんに「ことぶき生活便利マップ」を手渡され、約50分間町をまわります。このマップには、食事処、商店、コインシャワーに加え、生活に役立つさまざまなことが載っています。例えば、福祉保健センターで配られるパン券が使える食料品店や、エアコン・エレベーター・洋式トイレのある宿泊所などが載っていたりもします。

Kさんの話によると、寿町にはエアコンやエレベーターのない部屋も多いらしいです。そして、みなさん高齢化になってきたため、屋内の熱中症に気を付ける必要があります。そのため、「帳場さん」という宿の管理人さんが、 住人の様子を把握したり、場合によっては金銭管理や薬の管理をしてくれることもあるらしいです。ちなみに、部屋は一部屋の大きさが3-4畳、トイレ・炊事場は共同で使用するとのことです。

Kさんは、道を歩きながらたくさんの人々に挨拶をかわしていました。ここではほとんど皆が顔見知りなのかもしれません。そして、あるくこと数分、「アルク」 というアルコール依存者の回復をサポートするNPO法人を訪ねました。ここではスタッフもほぼ全員元アルコール依存症患者とのことです。私たちにお話をしてくださったスタッフの方も「今でもお酒を飲むとスリップしちゃうから医者に止められている」とおっしゃっていました。ここではオープンミーティングもしており、予約をすれば誰でも見学可能とのことなので、今度またゆっくりと見学してみたいと思いました。

<10:30>
ここでKさんの町案内は終了し、こんどは「はまかぜ」というホームレス自立支援施設の見学をしました。ここではホームレスの方々に対して宿泊施設を提供するとともに、就労支援もすることで、自立支援を促すところです。ホームレスの方々の直接の受け入れはしていませんが、市内を回る巡回相談員や横浜市内の保健福祉センターからはまかぜに依頼が来て、入所という運びになるそうです。定員は250名(うち女性枠20名)であり、原則として利用は30日(最大1年まで利用可)です。

ここでは、部屋・洗濯場・お風呂・食堂などを見せていただきました。見せてもらった部屋は6人定員ほどの大部屋で、二段ベッドが並んでいました。また、お風呂場には浴槽が2つあり、一つは普段ここに暮らしている人が使うもの、もう一つはその日ここにやってきたホームレスの人が使うもの、と分けられていたのが印象的でした。

ここに寝泊まりしながら就職活動を行うため、スーツなどの就職活動用品の貸し出しや、面接試験に赴くための交通費も支給するとのことです。また、ここから仕事に通ってお給料をためることも可能で、自分で敷金礼金を用意して新しい住居を見つけることも可能とのことです。通勤費は1か月分借りられ、食事も一日2食まで支給されます。


その後、横浜市寿福祉プラザという隣の建物に移動し、寿町の歴史や現状などをパワーポイントで市の職員の方に説明していただきました。
説明の中で印象的だった話は、ゴミの不法投棄をなくすために取った対策のお話でした。監視カメラを置くという案と、花のプランターを置くという案があり、最初「そんなの無理だ」と言われていたプランターの案を実行してみたところ、不法投棄が無くなったとのことです。職員の方の説明によると、寿町の住人は家族のいない人が多いため、動物や植物をとても可愛がるとのことです。

これらのお話を聞いた後にこの建物を後にすると、確かに寿町の道にはプランターがたくさんあることに気が付きました。

<12:00>
お昼ご飯は、「さなぎ食堂」という、格安の定食屋でいただきました。インターネットによると、ここは賞味期限の迫ったコンビニのお弁当を再利用しているため、格安で提供できるとのことです。

私の食べた豚の生姜焼き定食は400円でしたが、暖かい手作りのお味噌汁も付いていた上、多分お肉もコンビニのお弁当でなく手作りであったように感じました。付け合せの煮豆や煮椎茸はコンビニのお惣菜であったかもしれません。他にも豚汁定食も300円で食べられるのですが、頼んだ人の定食を見てみるととてもボリューム満点で美味しそうでした。

ここは、立ち食いスペースもあり、私たちはお昼の混雑時に4人という大人数で行ったため、テーブルではなく立ち食いで食べました。これも新鮮な体験でした。
お店の方もとても感じが良く、明るくて雰囲気の良いお店でした。


<13:00>
午後はことぶき福祉作業所に行きました。ここは障がい者の方が通う場所とのことですか、実際行ってみるとお年寄りの方が多く、障がいはあまり感じられませんでした。
室内で遊ぶゴルフのような遊びをしたあと、おやつタイムには皆さんが作った切り絵や紙細工の箱を見せていただきました。皆さん笑顔の多い人たちで、冗談も飛び交い、和やかな時を過ごしました。

<15:00>
ここからはことぶき共同診療所に戻り、控室で院長の鈴木先生にいろいろお話を伺いました。寿町の日常に関するお話や、ことぶき共同診療所の設立について、寿町に住む人の背景や、自立支援の取り組みなど、多岐にわたるお話をしていただきました。
今日一日寿町を実際見た後でお話を聞くと、納得できる点が多くありました。

さらにその後は、名誉院長の田中先生のお話を伺いました。田中先生は、もともと市の職員として寿町に携わり、その後40歳代後半で医学部に入学し、53歳で卒業、56歳でことぶき共同診療所を設立したとのことです。理由をお尋ねすると「寿町が好きだったから」というお返事が返ってきて、暖かい気持ちになりました。

<おわりに>

今日一日の見学を終えて、むやみに怖がっていた寿町という町の見方がだいぶ変わりました。どなたかが寿町に対して「労働の町から福祉の町へ」ということをおっしゃっていましたが、まさに福祉の町としての寿町を見学できました。

寿町は、一日では見切れない深い町だと思います。まずは名誉院長の田中先生に頂いた冊子を読み、寿町についての知識を得たりそこで働く人たちの声をしっかり理解して、また再び寿町を見学してみたいと思います。


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内閣府による
  自殺総合対策大綱に関する
     ヒアリング




日本の国としての自殺予防対策は、自殺対策基本法と自殺総合対策大綱に則り進められていますが、大綱は5年ごとに見直しがなされることになっていて、今年がその年にあたり、内閣府が先日、自殺予防対策に従事する全国の民間団体にヒアリングを行いました。私は、大和・藤沢自殺予防ネットワークの人間として参加してきました。

ヒアリングは中部以北と関西以南の2回に分かれて実施されるとのことで、23日は中部以北の団体が招聘されていました。ヒアリングで聴くほうは、内閣府・自殺対策担当大臣の中川正春氏と政務官、本多総理大臣補佐官、および内閣府審議官などの皆さんでした。

 各団体、持ち時間は5分で、団体の概要と大綱見直しへの意見を述べました。ざっくり言ってしまうと、人が足りない、資金がないという陳情や苦労話がほとんどでしたが、これが実情なのですね。提言的なものはあまり出ませんでした。私は、1)内閣府による「good practiceの普及」の後押し、2)専門職を目指す学生の基盤教育の中に自殺予防対策に関する教育課程を入れる、3)一般住民や民生委員児童委員への負担を強いるよりもまず、専門職教育の徹底を、4)統合失調症罹患者や身体疾患をもつ方が自殺予防対策からこぼれ落ちないような対策を、5)これまでの国や地方公共団体の自殺対策の取り組みの効果の評価をまずしっかりやっていただきたい、といった提案をしてきました。

 残念に思ったのは、持ち時間をはるかに多く超えて話す人がいたこと、その中に、他者へのいたずらな批判ばかりを繰り返す人がいたことです。もちろん批判は時と場合に応じて必要です。ただ、いたずらな批判は何の効果も生みません。自殺対策がうまく行かないのだとすれば、その責任の割付けではなく、その奥にある原因を検討すべきだと思います。

 好感がもてたのは、中川大臣が熱心に耳を傾けていたことです。本多補佐官も、最後まで熱心に聞いていました。かつて、私はある省のある大臣のヒアリングも受けましたが、その方は、初めにメディアが開会時の様子をカメラに収め、それが終わった途端にヒアリングに参加することなく退席してしまいました。あれには驚きました。

中川大臣と内閣府の皆様が、今後の5年間を見据えて、実効性や将来性のある大綱改正をしてくださればと思います。


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