第五曲 風の谷のナウシカ/栗コーダーカルテット
     第六曲:ラヴェル:管弦楽曲集、アンドレ・クリュイタンス指揮 
           パリ音楽院管弦楽団(1962年録音)
   第七曲:One of us / Joan Osborne
   第八曲:Live! / Jim Hall
   第九曲:LES MISERABLES: HIGHLIGHTS
       FROM THE MOTION PICTURE SOUNDTRACK
 


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第五曲  風の谷のナウシカ/栗コーダーカルテット
     (アルバム「ウクレレ・ジブリ」より)


私が大人になってから好きになった楽器、その中に、リコーダーとピアニカがあります。保育園や小学校で触れてきて、親しみがあるものの、実は奥が深い!上手な人が吹くと、本当に味わい深い音色で、吹き手の息使いや体温までもが伝わって来る気がします。

そんなリコーダーの名手に、「栗コーダーカルテット」というバンドが居るのを、みなさんご存知でしょうか?彼らは、様々なCMソングや、NHKのピタゴラスイッチのテーマ曲なども演奏しているので、きっとみなさんどこかで彼らの演奏を耳にしたことがあることと思います。

今回ご紹介したいのは、「ウクレレ・ジブリ」というアルバムの中の一曲。このアルバムは、いろんなミュージシャンがウクレレなどアコースティックの楽器で、ジブリの映画の曲を演奏している、インストゥルメンタル(歌が無くて楽器だけ)のものです。ジブリの映画で使われている有名な曲ばかりなので、どれもこれも耳なじみのあるメロディーです。そして全15曲中、栗コーダーカルテットは、「となりのトトロ」、「風の谷のナウシカ」、「もののけ姫」など、実に6曲を演奏しているのですが、そのどれもが、本当に味わい深いのです!!

とくに、「風の谷のナウシカ」は、マイナー調のメロディーと、リコーダーの暖かい音色が混ぜ合わさって、なんとなく懐かしいような切ないような甘酸っぱい気持ちにさせられます。リコーダーの音が優しくて優しくて、彼らが大切にリコーダーに息を吹き込んでいることが良く分かります。

その他にも、「となりのトトロ」は、誰もが知っているポップなメロディーが、リコーダーで演奏されることにより、さらに楽しく、それでいて柔らかく、なんともリラックスできる曲に仕上がっています。

このアルバム、眠る前などのくつろぎの時に聴くもよし、仕事や勉強で疲れた時の癒しに聴くもよし、何か集中したいときのBGMにもよし、と万能なアルバムなのです。使われている楽器が、リコーダー、ウクレレ、ピアニカなどなので、頭の中にスーッと流れて来ながら、思考のジャマになりません。ちなみに、赤ちゃんが泣き止まない時にもおすすめですよ。



レーベル:ジェネオン エンタテイメント



                            執筆者 :



第六曲 ラヴェル:管弦楽曲集
    アンドレ・クリュイタンス指揮、
    パリ音楽院管弦楽団(1962年録音)



東芝EMI、CC33-3399

ラヴェルというフランスの作曲家ですが、「スイスの時計職人」と言われたくらい、独自のバランス感によって精緻な音楽を作った人です。非常に技巧的なところが、また「職人」と呼ばれた理由なのでしょうか。ラベルの「ボレロ」などは、その持ち味が最大限活かされた楽曲の一つなのでしょうね。ラヴェルのことを、古典と現代の折衷的なポジションにあるという人もいますが、私は、何というか、ギリギリの均衡で儚くも美的な世界を現出するラヴェルの音楽がとても好きです。
 そもそも、どうしてラヴェルが好きになったかというと、父の同僚からいただいたラヴェルの管弦楽曲集の何枚組かの輸入盤レコードがきっかけでした。そのレコードの演奏が、上に書いたようなラヴェルの本質を伝えてくれたんですね。どうやら、父の同僚もそのレコードをある人からいただいたようで、自分は興味がないからと私に下さったようでしたが、後に大元の方からやっぱり返してほしいと言われたようで、謝罪とともにそのレコードは持っていかれてしまいました。しかしそのレコードの演奏が忘れられず、CDの時代になって購入したのが、今日の第四曲のCDです。アンドレ・クリュイタンス/パリ音楽院管弦楽団によるラヴェルの管弦楽曲集はCD4枚から成り、CD初出当時は分売されていましたが、いずれもジャケットにご覧のようなバレエ音楽の場面が描かれた洒落たものです。4枚はいずれも素晴らしい演奏なのですが、とりわけおすすめはこの山吹色のものです。逝けるお王女のためのパヴァーヌ(亡き王女のための…と言われているものと同じもの)とクープランの墓が出色です。
 パリ音楽院管弦楽団というのは、音楽院出身や教授陣から構成されたオーケストラで、このすぐ後に改編されてパリ管弦楽団へと生まれ変わりました。クリュイタンスは、ベルギー人の指揮者で、フランスものからドイツ音楽まで幅広いレパートリーを誇りましたが、私は音楽院管弦楽団との演奏ばかり聴いています。演奏は、オーケストラ総体としての演奏技術、例えばピッチや統率性については、現代のオーケストラと比べると劣りますが、独奏者や、時々浮かび上がってくる弦楽器の前のほうに座っている演奏者の音質やアーティキュレーション、そしてそこから醸し出されるニュアンスが絶妙です。また、何と言っても、オーケストラのメンバー全員が同じ美的センスをもってラヴェルを奏いているのでそこに独特の世界が生まれます。これがかつてのフランス人によるフランスの音楽だったのでしょうね。今のようなインターナショナルな世界では聴くことの出来ない演奏だと思います。
 ラヴェルのCDでは、私は、他にダニエル・バレンボイム/パリ管弦楽団、クラウディオ・アバド/ロンドン交響楽団やケント・ナガノ指揮/リヨン歌劇場管弦楽団などを聴いています。




                            執筆者 :



第七曲 One of us / Joan Osborne


PLG 526699

Joan Osborneはアメリカのシンガーソングライターでこの曲を1995年に発表しました。
1995年と言えば阪神淡路大震災が起きた年。多くの方が被災されました。
また、インフラが壊滅的なダメージを受け、ご近所さんのつながりの重要性が見つめ直された年でもあったと思います。


What if God was one of us(神様が私たちの中の誰かだとしたら)
just a slob like one of us(のろまな誰かだとしたら)
just a stranger on the bus(バスに乗り合わせた知らない人だとしたら)


神様にあまりなじみが無い自分はGodを「大切な人」と読み替えました。

自分にとって大切な家族、恋人、友人は
「のろまなあいつ」「バスに乗り合わせた知らない人」
になりうるということを示唆しています。


前述の歌詞は
Tryn'to make his way home(必死で家に帰ろうとしている)
と続きます

道端で迷っている人、困っている人、は誰かにとっての大切な人である。
人と人とのつながりが稀薄になりがちな今、この歌詞の持つ意味は大きいのではないでしょうか。



阪神淡路大震災のあと、我々は東日本大震災に見舞われました。
自分も大きな不安を感じ、精神的ショックを受けました。
一方で、誰もが困難な状況に陥っている中、供給された限りある物資を、整然と列をなして受け取る姿に感銘を受け、
また同じ日本に生きる者として誇りに思いました。
自分が大変な時であっても、他人を思いやる心を忘れない。


見ず知らずの他人は神様(大切な人)かもしれない。
この思いを忘れずにいたいと思います。




                            執筆者 :



第八曲  Live! / Jim Hall


或る神様について。

去る2013年12月10日に最も偉大なギタリストが亡くなりました。名前はジム・ホール。コンテンポラリー・ジャズギターの始祖として知られていますが、コンテンポラリー・ジャズの成立を促したと言った方が正しいと思います。

アフリカ系アメリカ人の音楽的本能=ブルースとヨーロッパの楽器・軍隊音楽・音楽理論が出会って生まれたのがジャズです。その出会い方の多様性は複数の源流を成し、1920年代に集団的なダンスミュージックとして統合され、1930年代のスウィングジャズで芽生え始めた「個人的であること」「即興性」が1940年代にビバップ運動によって解放されてモダンジャズが成立します。

こうしたジャズの経時的また構造的成立に関する認識は大体において共有されているところですが、ギターでジャズを演奏する人間には、もう一つの源流としてフランスのジプシー音楽が大きな影響をもたらしています。ジプシー音楽における弦楽器の高度な演奏技法をスウィングに導入したジプシー・スウィングがかなりの音楽的成功をみせたことで、以後ジャズギター奏者はこれを参照していきます。この特異性が、ジャズのなかで「ジャズギター」という箱庭的ジャンルを成立させる一因となりました。

エレクトリック・ギターという楽器が発明されなければ、ギターはモダンジャズで使われることはなかったでしょう。単音でも大きな音量を発することができるようになったことで、ギターはジャカジャカ鳴らすリズム楽器から脱却し、メロディとハーモニーを表現する楽器となりました。こうしてエレクトリック・ギターが20世紀後半以降世界で最もプレゼンスの高い楽器の一つとなったことは明白ですが、一方でジャズにおいては必ずしもそうではなく、メロディを奏でるには管楽器の方が表現力があるし、ハーモニーは限定されているのでピアノの方が優れているという相対的不利を抱えることになったのも事実でした。

 ジャズにおけるギターを特殊な文脈と楽器特性から解放すること、1950年代後半に登場した「インタープレイ」(演奏者間の対話的演奏。更にそれを聴衆が2人称の受け手ではなく第三者として鑑賞するという状況)という新たな価値観に積極的に取り組むこと、それがジム・ホールが帯びた使命であり、果たした功績でした。

 マイルス・デイヴィスやジョン・コルトレーンらが推し進めた1960年代のジャズの革新の本流とは、属する音楽的コミュニティについても演奏の方法論においてもやや距離のあるところにいた彼ですが、それまでにない柔軟なリズム構築と音の強弱の振れ幅、4次元的ハーモニー拡張、“微かなもの”を肯定した浮遊感のあるサウンドは、のちのコンテンポラリー・ジャズの原風景となる音世界を提供しました。

 本作は1975年のライヴ音源で、既に彼が影響を受けた後進が世に出ているような時期の作品で、やさしさと禍々しさの交錯するスリリングな演奏が展開されています。彼がしばしば口にした“listen and react”の真骨頂といえるでしょう。彼が晩年アバンギャルドな演奏に取り組んだのもこの原則の純化を志向したものでした。

 筆者は2012年の来日公演を見に行きました。すっかり背中が曲がり小さくなった身体で杖を突く姿には神々しさすらありましたが、演奏が始まるとなんともヤンチャで、冒険心と探究心は健在でした。私が行ったのとは別の会場では、演奏が終わり退場する彼を拍手で見送るオーディエンスに向かって杖を振りかざしたかと思うと、杖の先に仕込んでおいたライトをピカピカ光らせるという小ネタも披露してくれたそうです。さすが神様!

 本作の裏ジャケットで「バッチグー」のサインをしてほほ笑む彼の肖像。ありがとうジム・ホール。



レーベル:Verve、EAN:0044006542829




                            執筆者 :



第九曲:LES MISERABLES: HIGHLIGHTS
    FROM THE MOTION PICTURE SOUNDTRACK



V. A.
UICP-1146

2012年末〜2013年に大ヒットした映画『レ・ミゼラブル』のサウンドトラックです。筆者は1年前の今頃の時期に観に行きました。公開直後に観に行った親友が音楽のクオリティの高さについて話してくれたのは、1月にクマのぬいぐるみが活躍する映画を一緒に観に行ったときのことでした。そして自分でも観に行って、その魅力に取りつかれてしまったのでした。

 全編を通していくつかのメロディモチーフを色々に装いを変えて繰り返し登場させていく手法は登場人物たちの背負う“宿命”を感じさせるのにも一役買っているわけですが、どのフレーズもパワーにあふれていて、壮大なミュージカルを支え彩るに十分な輝きを放っています。ちなみに本作では歌は実際に演技をしながらのライヴ録音を敢行するという気合いの入りようです。

 この作品には他には感じない特別なものを筆者は感じました。それって一体なんなのだろうと考えてみて出た結論が、「高潔さ」。登場人物たちがそれぞれに自分の人生を高潔に生きていて、それが基調になって物語も音楽も成り立っている。

     To love another person is to see the face of God.

 これはフィナーレの歌詞の一節です。特定の人間との間の感情としての愛と、万人に対する倫理としての愛がクロスするところにこの物語があるのだと思います。



                            執筆者 :



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