ケース・マネジメントによる支援とケア
 厚生労働省自殺未遂者ケア研修 ←NEW!!
 PEEC             
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ケース・マネジメントによる
         支援とケア


自殺で亡くなった方や、命を落とす寸前にまでいった重症の自殺未遂の方を詳しく調べると、その40%以上の方に過去の未遂歴があります。また、自傷行為や自殺未遂をした方の3−12%が自殺で亡くなっていたことがわかり、自殺未遂者に対して、自殺の再企図が起こらないようにするためのケアや支援が必要とされています(自殺対策基本法・自殺総合対策大綱にもその必要性が明記されています)。

自殺未遂者に対するケアや支援として、世界を広く見渡してみると、救急医療を受けたあとに電話相談などの情報が書かれたカードを渡したり、ケア提供者が、後日、安否を尋ねる電話を掛けたり、また、自宅を訪問する試みなどがなされています。

日本では、岩手医科大学や、横浜市立大学が、救命救急センターに精神科医を配置し、記センター内のさまざまなメンタルヘルス対応をするとともに、自殺未遂者に対して危機介入を行い、さまざまな支援の導入を行っています。 

たとえば、横浜市立大学附属市民総合医療センター・高度救命救急センターでは、自殺未遂者全例とその家族に対して心理的危機介入(精神科医が本人達と向き合い、声掛けをし、心理療法を行うこと)、精神医学的評価(精神科の観点かたみた患者の見立て)と心理社会的評価(患者の生活背景のアセスメント)、そしてこれに基づく精神科治療の導入とソーシャルワーク(生活支援)を行っています。このような、患者一人ひとりの状況に合わせて行う支援のことを、「ケース・マネジメント介入」と呼び、精神科医だけでなく、救急医、看護師、心理士、ソーシャルワーカなどの多職種協働で患者へのケア・支援が行われています。患者によっては、救命救急センターを退院した後も、支援が継続されます(図1)。横浜市立大学で行われた予備的研究によれば、このケース・マネジメント介入により、自殺未遂者の自殺再企図がある程度抑止される可能性がデータ上、示唆されています。



現在、さらにこの未遂者支援モデルを大々的に実施し、この方法が本当に多くの未遂者の方に効果があるのかどうかを検証してみようという動きがあります。これは、「ACTION-J」という研究事業で、全国14の医療施設が協働して、多くの自殺未遂者の方の実態を調査し、ケア・支援を行い、そのデータを集積しているところです。





厚生労働省自殺未遂者ケア研修

厚生労働省は、平成20年度より毎年、「自殺未遂者ケア研修会」を主催しています。初年度は年1回でしたが、現在は、年4回開催されています。
 どのような研修会かというと、1日コースのプログラムで、救急医療に携わる方々を対象に、基調講演と、自殺未遂者対応のための事例検討会(グループ・ワーク形式)で行われ、その他にレクチャーがいくつか行われます。
 コースは2つあり、一つは一般(身体)救急向けで、もう一つは精神科救急向けです。この「精神科救急」ということばがいろいろな使われ方をしているので誤解のないように言うと、精神科病院や一般病院精神科に搬送されるような、精神科が対応する救急という意味です。どちらのコースも、医師・看護師だけでなく、救急救命士や救急情報窓口担当者を含む行政職員、作業療法士なども参加します。最近では、一般救急コースが年間3回(平成24年度は、東京、名古屋、福岡)、精神科救急コースが1回(平成24年度は大阪)、開催されています。

 基調講演は、国の自殺予防対策、自殺未遂者ケアの意義に関する解説が中心で、レクチャーは、ケア・モデル、地域自殺予防対策、そして自死遺族の実状と支援に関する概要についてなされます(図1)。事例検討は、岩手医科大学や横浜市立大学で取り組まれてきた、ケース・マネジメント・モデルに基づいて行われますが、専門職や専任従事者のための研修なので、自殺未遂者のアセスメントが重視されます(図2)。事例検討には、いくつものアンカーポイントが設けられていて、ファシリテーターのヘルプを受けながら進行しますが、講師もファシリテーターも、自殺予防学の専門家とケース・マネジメント・モデルの実践をしている臨床家が務めています(図2)。








 この研修会には、平成21年度から日本臨床救急医学会が、平成22年度からは日本精神科救急学会が共催し、現在、両学会が作成した自殺予防対策のための手引きやガイドラインが研修テキストとして使用されています。
 この研修会の案内は、毎年度、厚生労働省のホームページ上で告知されます。検索機能をつかって、「自殺未遂者ケア研修会」と入力、検索すると案内が出てきます。





PEEC

自傷行為を行った人や、自殺未遂者の多くは、医療機関を受診することなく、自分自身で傷や具合の悪さに対処していると言われています。しかし、一部の人は、救急病院などに搬送されます。本来は、そこに精神科医や臨床心理士などがいて、患者さんとして受け止め、適切に対応し、地域ケアにつなげていくべきなのだと思いますが、そのような施設は少なく、さらに夜間や休日にそのような体制をとることができる施設となるとごくわずかです。

そのため、救急医療部門の医師や看護師がこれらの患者さんへの適切な対応をあらためて学ぶ必要性があると考え、日本臨床救急医学会が、2008年に「自殺企図者のケアに関する検討委員会」を立ち上げました。そして、「自殺未遂者への対応:救急外来(ER)・救急科・救命救急センターのスタッフのための手引き」を刊行しました。さらに、この活動の中から、自殺企図者に限定することなく、メンタルへルス不調、ないしは精神疾患を有する患者さんで救急医療を受診するさまざまな人に、必要なプライマリ・ケアを実践できるようにということで、Psychiatric Evaluation in Emergency Care、略称PEEC(ピーク)の名を掲げた活動団体が任意で活動を開始しました。

PEECでは、さっそく、適切なプライマリ・ケア実践のための基礎的知識やアセスメント法、アセスメントを可能にするコミュニケーション法、あるいは社会資源の活用などについて詳述したテキストを刊行し(図)、これに基づく研修プログラムの作成に着手しています。具体的には、救急医療で頻繁に出会う、身体化症状や、頻回に自損行為を繰り返し患者さん、依存症患者さん、あるいは重篤な精神病症状を呈する外傷患者さんへの対応などを、動画などを用いながらグループ・ワーク形式で検討し、レクチャーを受けるというものです。まだ試行段階ですが、予定としては、2013年中に作り込みをし、日本臨床救急医学会の年会で研修会を実施し、全国的に展開をしていくということになっています。







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